コラム

eラーニングとは?導入のメリット・デメリット、システムの選び方

従来の社員研修では、研修講師と受講者が会場に集合し、対面で講義を行う形式が主流でした。一方、昨今は研修をオンラインで実施する「eラーニング」が注目されています。eラーニングを活用すれば、学習者側にも企業側にもさまざまなメリットが期待できます。

この記事では、eラーニングでの研修の実施を検討しているご担当者様へ向けて、導入のメリット・デメリットや、システムの選び方などを解説します。

eラーニングとは?

初めに、eラーニングの定義や目的などの基礎知識をご紹介します。eラーニングとはどんな学習方法なのか、特徴を押さえておきましょう。

eラーニングの定義

eラーニングとは、インターネットを利用した学習形態のことです。受講の際はパソコン・スマートフォン・タブレットなどのIT機器を使用します。「eラーニング」という名称は「electronic(=電子的な)」を略したもので、前述した学習形態の特徴を示しています。

eラーニングを実施する際には、専用のeラーニングシステムを用いるのが一般的です。このシステムは「学習管理システム」とも呼ばれ、「Learning Management System」を略して「LMS」という名称で呼ばれることもあります。

eラーニングの目的

eラーニングは企業研修でも活用され、学習者に知識や技術を習得させて、企業全体の成長につなげるという重要な目的があります。ここでは、学習者側・企業側それぞれの視点でeラーニングの目的を解説します。

学習者視点の主な目的

学習者側にとっては、eラーニングを通じて業務で役立つ知識・スキルを身につけるという目的があります。eラーニングによる学習に取り組むことで、スキルアップやキャリアアップを実現できるでしょう。

企業視点の主な目的

企業側には、eラーニングを導入して、従業員の学習機会を増やして知識付与やスキル向上をサポートし、業務で活躍できる人材を育成するという目的があります。そのためにも、従業員が学習しやすい環境を整備するようにしましょう。

eラーニングの歴史

eラーニングは、1950年代に登場した「CAI(Computer Assisted Instruction)」という考え方から始まったとされています。CAIを発端として、コンピューターによる教育支援の研究が徐々に発展していきました。その後、ネットワークインフラが普及して「eラーニング」という言葉が定着し始めたのは、2000年代頃のことです。以降は技術の進歩に伴い、CD-ROMを利用した学習からオンライン学習へと切り替わっていき、現在のような学習スタイルになりました。

eラーニングが発展した経緯などの歴史について、詳しくは以下の関連記事で解説しています。企業研修のご担当者様は、こちらの記事も併せてご覧ください。

企業の人材育成に欠かせないeラーニング 発展の経緯と今後
URL:https://www.ntthumanex.co.jp/column/elearning/

eラーニングを導入する主なメリット・デメリット

eラーニングの導入後は具体的にどんなメリットが期待できるのでしょうか。ここでは、従来の社員教育の手法と比べながら、eラーニングのメリット・デメリットについてご紹介します。

eラーニングを導入する主なメリット

研修の実施にかかるコストや手間を削減できる

eラーニングで研修を実施すると、集合研修と比べて講師代・会場代・交通費・教材費などのコストを削減できます。全体のスケジュール調整や研修場所の手配が不要なので、研修担当者の業務負担を抑えられます。

インターネット環境さえあれば、いつでもどこでも学べる

eラーニングはオンラインで実施するので、受講者が会場へ足を運ぶ必要がありません。インターネット環境とデバイスさえあれば、いつでもどこでも気軽に学習を始められます。テレワーク中の従業員が自宅で受講することも可能です。

すき間時間を活用できる

eラーニングは時間や場所を問わずに受講できるので、柔軟なスケジュールで学習を進められます。こうした短時間の学習は「マイクロラーニング」と呼ばれ、多忙な受講者でも無理なく実現できる効率的な学習方法として注目されています。

受講者の学習状況を管理できる

eラーニングシステムには受講者の学習状況を管理する機能が搭載されています。研修担当者や管理者は、受講者の学習履歴やテスト結果などをシステム上で共有し、指導や研修プログラムの改善などに役立てられます。

学習の品質を均質化できる

eラーニングでは既存の学習コンテンツを使って学ぶので、研修講師のスキルによる指導内容のばらつきが生じません。社内の学習品質を均質化したり、説明内容を統一したりして、より効果的な指導を実現できます。

教材の修正やアップデートなどを一斉にいつでもできる

eラーニングシステムを活用すれば、配信する学習コンテンツの修正やアップデートを一斉に行えます。常に最新の情報を研修に盛り込めるのが魅力です。また、教材の管理が効率化され、研修担当者の労力を大幅に削減できます。

eラーニングを導入する主なデメリット

インターネット環境がないと実施が難しい

eラーニングは、インターネット環境や端末を用意しなければ実施できません。学習者全員の環境が整っていることが前提となり、不足がある場合は整備のコストが発生するのが注意点です。

受講者のモチベーションを保つ工夫が必要

eラーニングは集合研修のように講師や受講者同士の交流がありません。受講者が一人でも学習意欲を維持できるよう、フォローアップする仕組みが求められます。

自社で独自のeラーニング教材を作るにはノウハウが必要

eラーニングの教材を内製すると自社に適した研修を実施できますが、制作にはノウハウが必要で、かつ多くの手間がかかります。必要に応じて外部のサービス提供会社の教材を活用すると良いでしょう。

学習管理システムの導入や教材作成などにコストがかかる

eラーニングで研修を実施するには、学習管理システムの導入や教材作成などの事前準備が欠かせません。研修がスタートするまでに多くの工数がかかる点に留意しましょう。

学習内容によってはeラーニングのみで完結できない

専門的な技術を習得する場面のように、実技では対面での指導が必須となり、eラーニングのみでは社員研修を完結できないケースもあります。学習内容に合わせて研修に適した形式を選択する必要があります。

eラーニングの実施に必要なもの

eラーニングで社内研修を実施する場合、企業側は以下のサービス・機器・人材を確保する必要があります。運用へ向けて必要なものを確認してみましょう。

eラーニングシステム(学習管理システム)

eラーニングシステム(学習管理システム)は、教材制作から進捗管理まで幅広い業務に対応可能で、システム上で社員研修に関わる資料や情報をまとめて管理できます。個別に管理すると多くの手間がかかり、研修担当者の業務が煩雑になりやすいので、学習データはeラーニングシステムで管理するのがおすすめです。

教材

eラーニングを実施するには学習コンテンツが必要です。教材の種類は「スライド教材」「動画教材」「テキスト教材」など、さまざまな種類があります。教材は内製する以外に、外部のサービス提供会社から導入することが可能です。自社の業種や業界、目的に適した教材を用意しましょう。

メンター(学習支援者)

eラーニングで研修を実施する場合、サポート役であるメンター(学習支援者・学習アドバイザー・チューターとも呼ばれる)を配置するのが有効です。メンターは学習者の疑問や質問を解消して学びを支援したり、学習者にフィードバックを行ってモチベーション向上に寄与したりする役割があります。

端末

eラーニングで学習するには、パソコン・スマートフォン・タブレットなどの端末が必須です。可能であれば、企業側が従業員に端末を配布して必要な機器を貸し出すのが望ましいでしょう。または、個人の端末でeラーニングを受講できるようにするのも一つの方法です。

eラーニングを選ぶ際に気を付けるべきポイント

近年は、数多くのサービス提供会社がeラーニングシステムを提供しています。自社の目標や予算に合わせて適切なeラーニングシステムを選定し、教育効果を高めましょう。

eラーニングシステムを選ぶポイント

長期的な目標に沿ったシステムか

eラーニングシステムを導入するなら、自社の長期的な目標に合わせて運用できるものが望ましいといえます。目標を設定する際は、企業理念やビジョンから逆算して、どのような社員を育成すべきか検討すると良いでしょう。長期的な視点に立って目標達成に適したシステムを選ぶことが大切です。

予算に合うか

eラーニングシステムの導入時には、初期費用や月額費用などのコストが発生します。各社のシステムを比較するときは、単に金額を比べるだけでなく、教育研修によってもたらされる効果を重視しましょう。予算の範囲内で目標達成を実現できる費用対効果の高いシステムを選ぶようおすすめします。

学習の管理がしやすいか

eラーニングシステムには、管理者が受講者の進捗状況を把握できる仕組みがあると便利です。管理機能によって社内の情報を一元管理すると、進捗管理が効率化され、受講が遅延している対象者へのフォローをスムーズに行えるようになります。

学習の成果を評価する仕組みがあるか

eラーニングシステムによっては、単元ごとの「理解度テスト」や全体の「修了テスト」のような、学習の成果を評価する機能が搭載されています。受講者の習熟度を確認して研修の効果測定を行うためにも、学習の成果を評価する仕組みがあると良いでしょう。

受講者が使いやすいか

eラーニングシステムは主に受講者が操作することになります。そのため、モチベーション維持の観点から受講者にとって使い方がわかりやすく、ストレスなく操作できるシステムを選ぶ必要があります。管理者側の使い勝手だけでなく、受講者側の使用感にも配慮しましょう。

サポート体制が充実しているか

初めてeラーニングシステムを導入する場合は、操作方法や活用方法に関して不明点が多くあるでしょう。そのため、「速やかに問い合わせができる」「操作マニュアルが用意してある」といったような、サポート体制の充実したサービスを選ぶと安心です。

ユーザー制限やセキュリティなど、必要な機能が整っているか

社員研修に用いるeラーニングシステムでは、セキュリティ対策も重要となります。自社の研修内容や社員の個人情報を守るため、ユーザー別のアクセス制限をはじめとしたセキュリティ対策機能の有無も確認しておきましょう。

eラーニングコンテンツを選ぶポイント

知識のインプットだけでなくマインド醸成もできるか

eラーニングコンテンツを選ぶなら、受講者が知識をインプットするだけでなく、マインドを醸成し組織に浸透できるかどうかを重視しましょう。社員の“自分ごと化”を促進できる学習コンテンツを採用することが、研修を成功させるコツです。

リアルな事例でイメージしやすいかどうか

研修後に受講者が学んだ内容を業務へ活かせるよう、リアルで実践的なケースから学べるeラーニングコンテンツがおすすめです。特にコンプライアンス研修のような場面では、日頃の業務で起こり得る違反のリスクを学ぶために、リアルな事例を題材として扱ったコンテンツが最適です。

アウトプットできる仕組みや仕掛けがあるか

受講者がアウトプットできる仕組みや仕掛けがあるeラーニングコンテンツを採用すると、受講者が自ら考える力を育むことができます。受講者が受け身で動画を見るだけでなく、積極的に学んで発信ができるように設計された学習コンテンツを導入できると良いでしょう。

近年のeラーニングのトレンド

eラーニングでの学び方は、技術の向上やビジネスシーンのニーズの変化などを受けて常に変化しています。昨今のトレンドを押さえてeラーニングでの学習環境を構築すると良いでしょう。

体験するタイプの教材が増えてきている

近年は、受講者が体験を通じて学べるタイプの教材が充実しています。例えば、具体的な場面を想定したロールプレイング型の教材や、臨場感や没入感の高いVR教材などが挙げられます。座学で知識をインプットするだけでなく、学習効果を高められる体験型の教材も選ぶと良いでしょう。

アクティブラーニングにシフトしつつある

アクティブラーニングとは、受講者が能動的に学習できるように設計されている学習方法です。学習コンテンツで知識を身につけるとともに、受講者のアウトプットを促す設問が用意されているので、考える力が養われます。主体性のある社員を育成するために、アクティブラーニングにも着目してみましょう。

マイクロラーニングの活用が進んでいる

マイクロラーニングとは、数分程度で完了する短時間の学習のことを指します。eラーニングでも、数分で視聴できる短時間の動画コンテンツや簡単な理解度テストのような、マイクロラーニングに適した教材が多くあります。多忙な受講者がすき間時間に受講できるよう工夫して、負担軽減に配慮しましょう。

eラーニングに関するよくある質問

eラーニングに関するよくある質問とその回答をご紹介します。人事部門の研修担当者・教育担当者の方は、ぜひチェックしてみてください。

Q1.オンライン研修とeラーニングの違いは?

オンライン研修とは、ミーティングツール(Web会議ツール)などを使用して、オンラインで実施される研修のことです。研修講師や他の受講者とリアルタイムでコミュニケーションを取りながら学習します。それに対して、eラーニングは事前に準備された教材コンテンツをパソコンやモバイル端末から視聴して、自分のペースで学習するのが特徴です。どちらもオンラインで受講する点では共通しているものの、他の人と一緒にリアルタイムで学ぶか、自分のペースで学ぶかに大きな違いがあります。

Q2.eラーニングを企業が取り入れるのは義務?

企業が社員研修をeラーニングで実施するかどうかは、あくまでも各企業の判断に委ねられており、義務ではありません。ただし、近年はeラーニングが効果的かつ効率的な研修の手法として注目され、多くの企業で導入が進められています。社員研修の課題を解決するために、eラーニングの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

Q3.eラーニングは勤務時間に含まれる?

企業が従業員に指示を出してeラーニングの受講を義務づけた場合は、一般的にeラーニングは勤務時間に含まれると考えられます。そのため、企業側はeラーニングの受講時間を明確に管理し、勤務時間に含めて対応することが大切です。一方、従業員が自主的にeラーニングを受講する場合は、一般的には勤務時間に含まれないと考えられます。

Q4.eラーニングの普及率は?

独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する「J-Net21」では、2023年に20代以上の男女1,000人を対象に実施したeラーニングの利用実態に関する調査データが公表されています。調査では、eラーニングを「まだ一度も利用したことがない」という回答が最多で70.8%という結果になりました。一方、eラーニングを「かつて利用したことがある」という回答が14.8%を占めるほか、週に数回~年に数回の定期的なeラーニングの利用者は合計14.4%に達しています。また、今後eラーニングを利用したいと回答した層は合計26.1%であるほか、記述式自由回答欄では「機会があれば利用を検討する」という声が少なからず見られ、今後さらに普及率が高まる可能性があると期待されています。

【出典】「市場調査データ eラーニング」(J-Net21)
URL:https://j-net21.smrj.go.jp/startup/research/service/cons-e-learning.html
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eラーニングで社員研修の課題を解決しましょう!

ここまで、eラーニングを導入するメリット・デメリット、システムの選び方などについて解説しました。eラーニングは、社員研修のコストや手間を削減できる点や、効率的に学習しやすい点などから注目されています。導入の際は、従業員の“自分ごと化”を促し、自ら考える力が育まれる学習コンテンツを選ぶと良いでしょう。NTT HumanEXでは、企業のエンゲージメント向上を支援する多彩なeラーニングコンテンツを提供しています。ビジネスシーンのトレンドを押さえた豊富な分野のコンテンツをご用意していますので、貴社の課題に合わせてご利用ください。

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