第13回 1on1ミーティングとは?
1on1ミーティングとは
『1on1ミーティング』(以下1on1)とは、上司と部下が1対1で定期的に行うミーティングのことを指します。
米国のシリコンバレーの企業では、1on1は文化として根付いており、日本でも昨今、多くの企業が部下育成や組織マネジメントの根幹をなす制度として取り入れています。
1on1では、部下は上司に対し仕事で経験したことや悩みなどを伝え、対話をする中で内省を深め、上司は部下が成長するようにアドバイスを与え、気づきを促します。
会議や査定といったかしこまった場とは異なり、お互いに自然体で話す場を定期的に設けることでお互いに本音で深い対話ができ、部下育成や組織活性化の効果が期待できます。
職場における他のコミュニケーションとの違い
「部下とのコミュニケーションは、わざわざ1on1などやらなくてもとれているよ。」とお感じの方もおられるかもしれません。
改めて、職場で上司・部下の間で行われる他のコミュニケーションと1on1は何が違うのかについて整理しておきましょう。
1on1の大前提として『1on1は部下の為の時間である』という点があります。1on1で話す話題が何であれ、部下が1on1をやってよかったと思えなければなりません。1on1で上司と話したことにより、抱えていた課題のヒントが得られた、成長を実感できた、モヤモヤが晴れた等、1on1を通して部下がポジティブな変化を得られることが前提となります。
その上で、職場で行われるその他の代表的なコミュニケーションと比較し、1on1の位置づけを整理しましょう。(図1参照)
内容として特徴的なのは『重要だが必ずしも緊急ではない内容』という点です。例えば、『進めているプロジェクトでわざわざ声をかけて上司に相談する程ではないが気になっていること』や、『わざわざ言うほどではないが、職場の人間関係でうまく馴染めない人がいる』といったものが該当します。
これらの内容は、従来であれば『飲みにケーション』という場で話されていたものかもしれません。しかし、昨今は様々な要因で『飲みにケーション』は成り立ちにくくなっています。その結果、『重要だが必ずしも緊急ではない内容』について上司と部下での対話の機会が激減している実態があります。
そして、『重要だが必ずしも緊急ではない内容』は放置しておくと、多くの場合、事態は悪化します。1on1を定期的に行うことで、これらを未然に防ぐことができるという点も大きなポイントとなります。
1on1で得られるもの
1on1を実施することで上司は数多くの恩恵を得ることができます。
ここでは、ダニエル・キムの『組織の成功循環モデル』(図2)を元に、1on1の効果を考えていきましょう。
1on1で扱うべき話題
では、1on1ではどのような話をすればよいのでしょうか?
この点については、特に決まりがある訳ではありません。『部下の為の時間』という大前提が押さえられているのであれば何の話題でも構いません。部下が話したい、課題を感じている話題にすればよいのです。
ここでは以下の7項目を参考として紹介しておきます。
- 現在の仕事/プロジェクトについて
- 業務/組織の課題や改善について
- 部下の目標設定や評価について
- 部下の成長や今後のキャリアについて
- 組織の戦略や方針について
- 労務や心身の健康について
- プライベートについて
1on1の冒頭で、部下に対し、「今日はどの話題で話そうか?」と部下に対して選択肢を示し、部下に1on1の話題を選んでもらうというのも一案です。
1on1の進め方
1on1は、多くの場合30分~60分程度の時間をかけて行います。進め方についても決まったやり方がある訳ではありませんが、ここでは一般的な1on1の流れオープニング・ボディ・エンディングという3部構成に分けてご紹介いたします。
オープニング
オープニングは最初の5分~10分程度をかけます。ちょっとした雑談等でアイスブレイクを行い、心身の健康状態を確認しましょう。毎回の1on1で確認を続けていくと部下の心身の異変にいち早く気づくことができます。
1on1は継続して行っていますので、前回の1on1の内容や以降の取り組みについてもここで確認しましょう。部下が期待に沿った行動をとれているならば、大いに承認をするとよいでしょう。
ボディ
本題の部分となり、8割~9割の時間をかけます。ここでは、今回選定した話題について自由に話をするとよいでしょう。
その際に、上司としてはとにかく相手の話を聴ききること。いわゆる『傾聴』が重要になります。上司としては、部下の話を聴ききらない内にアドバイスを行いたくなる瞬間がありますが、一端、聴ききりましょう。その上で、アドバイスをした方がいいのか、部下本人に考えさせた方がいいのか、最適なコミュニケーションをとりましょう。
一方で、部下としては上司の考えを聞きたいという場面もあります。例えば、『今期の方針についてもう少し詳しく知りたい』といった場面です。
その場合は、なぜそのことについて知りたいのかといった部下の背景を踏まえた上で、部下が納得するまでしっかりと説明をすることが重要です。
エンディング
エンディングの場面で行うべきことは2つです。
1つ目は、話の内容のまとめです。ボディで部下が存分に話をすることができた場合、発散的となり話のポイントが整理できていない状態になっているかもしれません。或は、上司と部下とで話した内容・聴いた内容で認識の相違点があるかもしれません。そうならないように、今回の1on1の内容を上司がまとめてあげることが重要です。
2つ目は、次回までのアクションの確認です。多くの場合、1on1を通して、次回までにやるべきことが明確になります。上司としてすべきこと、部下としてすべきことをそれぞれ整理し、確認をしておきましょう。
まとめ
ここ数年、多くの企業で1on1が導入されていますが、狙い通りの効果がでないという組織も多く見受けられます。
『1on1を成果につなげるうえで、最も重要だと思うものは何か?』というビジネスコーチ社の調査(2018年)によれば、最も多い回答は『上司側の1on1スキル』という回答でした。
既に1on1を導入しているが、中々思うような成果がでていないという課題がある場合、その要因は上司側の1on1スキルにある可能性も高いのではないでしょうか。
効果的な1on1を実施する上で上司に求められるスキルは上図の通り多岐にわたります。(図3参照)しかし、これらのスキルは研修等を通してかなりの確率で高めることができるのも事実です。
1on1の導入・定着と上司の1on1についてのスキル強化は表裏一体となっており、上司のスキル強化についての取り組みを検討しておくことは必須です。