自立型人材の特徴と育成方法
近年、自律型人材の育成に力を入れる企業が増えています。企業で人事を担当している方の中には、自社でも自律型人材の育成を進めたいと考えている方もいるのではないでしょうか。本記事では、自律型人材が求められている背景や、社員の自立性を育成するポイントについて解説します。
自律性とは
自律とは、自らを律することを意味します。自律性とは、物事を進めるにあたり自分自身で計画を立て、自らの考えで目的達成のために行動することです。簡単な例では、観たいテレビ番組があるから早めにご飯を食べる、仕事に遅刻しないよう1本早い電車に乗る、といった行動が考えられます。
このように、自身でルールを決めて行動できる人のことを自律型人間と呼びます。自身を律することができるため、物事を計画通りに進められ、一度決めたことをきちんとやり遂げられる特性をもちます。
自立と混同されがちですが、意味が異なるため注意が必要です。自立は、周りからの助けを必要としない在り方です。助けを求めずに自らの足でしっかりと立つため、自立なのです。
今、なぜ自律性が必要なのか
企業を取り巻くビジネス環境は、年々変化しています。たとえば、リモートワークの普及です。近年、多くの企業がリモートワークを導入しましたが、今まではなかった課題が見えてきました。
ひとつめの課題として、社員の働きぶりを上司が正確に把握できないことがあります。目が行き届かないため把握できず、部下が仕事の手を抜く、気が緩みミスが増える、といった課題が表面化しました。
自らを律せる社員であれば、リモートワーク環境下でも、ルールに則って計画的に業務を進められます。だからこそ、社員に自律性を求める企業が増えたと考えられます。
また、自律性をもつ社員は自身を律することができるため、物事を計画通りに進めることができます。また、一度決めたことをきちんとやり遂げられます。つまり、自律性をもつ社員がいることで会社全体としての、「課題発見力」「計画策定能力」「目標達成能力」を上がります。さらに管理職は、部下に対する細やかなマネジメントを行う時間が減り、管理職も本来の業務に注力し、組織全体の生産性向上にも繋がります。
自律型人材が備える要素とは
自らを律することのできる人材を育成するには、自律型人材がどのような要素を備えているのかを理解しておく必要があります。以下、自律型人材に必要な要素をご紹介します。
自発性 自分で課題と解決策を見つけ出し行動できる
自発性を備えた人材であれば誰から指示されるわけでもなく、自ら進んで行動を起こせます。指示してもらえないと動けないようでは、時間を無駄にしてしまい、業務効率も低下してしまいます。
自発的に行動できる人材なら、指示を待たずとも積極的に業務を進められます。問題に直面してもすぐ誰かに質問しようとせず、自分自身で解決策を導き出そうとします。
自ら行動してくれるため、上司は細かい指示を出す必要がありません。本来の業務に集中でき、負担も軽減します。結果的に業務の質が向上し、生産性も高まるのです。
責任感がある
責任感のない人材には、大切な業務を任せられません。いい加減に仕事をこなすため、クオリティが低下します。業務の遅延により納期が大幅に遅れる、といった事態を引き起こす可能性もあります。
自律的な人材には、強い責任感が備わっています。自身で掲げた目標は必ず最後まで成し遂げる必要があると考えるため、重要な仕事も任せられるでしょう。
トラブルに遭遇したときも、投げ出すようなことがありません。解決が困難なトラブルであっても、自身で何とかすべきと考えます。責任感のない人材では、大きなトラブルに直面したとき、解決より先にいかにして責任を逃れるかを考えます。
自分で最後までやり遂げる、といった強い意思と責任感があり、それがモチベーションの維持につながっています。高いモチベーションを維持して業務を遂行できるため、生産性の向上につながるのです。
周囲を巻き込む力がある
自身で考えて行動する自律的な人材ですが、何もかも1人でこなそうとするわけではありません。ときには周りに応援を頼むこともあります。
たとえば、トラブルが発生したケースを考えてみましょう。自律的な人は、いかにすれば早期にトラブルを解決できるかを考えます。自分の力のみでは解決できない、時間がかかると判断したときには、周りの人に応援を要請して、トラブルに対応するのです。
人によっては、プライドが邪魔をして周りに助けを求められない方もいるでしょう。それを美学と考える方もいるかもしれませんが、それで業務に支障をきたしては意味がありません。合理的に考え、最善の解決策を導き出すのが自律的な人材です。
社員の自律性を高めるための育成ポイント
自律型の人材が備える要素として以下の点があげられます。
1)自発性 自分で課題と解決策を見つけ出し行動できる
2)責任感がある
3)周囲を巻き込む力がある
社員の自律性を高めるためには、これらの要素を押さえた育成方法を考える必要があります。
社員を適正に評価する
社員の働きぶりを正当に評価することが大切です。正当な評価ができれば、社員は自身の働きぶりが認められたと実感でき、仕事に対する情熱やモチベーションがアップします。
情熱やモチベーションがアップすれば、もっと仕事を頑張ろうと考えます。指示を待たずに、自ら仕事を見つけて取り組んでくれます。
公正かつ正当な評価を行うには、評価制度の見直しも必要です。現状、社員を公正かつ正当に評価できる体制が整っているでしょうか。正当な評価を行える体制が整っていなければ、社員は「どんなに頑張っても一緒」と考え、頑張る意欲をなくしてしまいます。
評価制度を見直し、必要に応じて改善しましょう。曖昧な評価基準は排除し、適正な評価を行える基準を設けてください。定量的な評価を行える体制を整えれば、数値に基づいた正当な評価を実現できます。
ミッションや経営ビジョンを共有する
ミッションや経営ビジョンを共有すれば、社員は自分が向かうべきゴールを認識できます。反対に、ミッションもビジョンも示されず、わからない状態では、どこに向かえばよいのかわかりません。
企業のミッションやビジョンは、抽象的に表現されているケースが少なくありません。そのため、中には理解できない、よくわからないと感じている社員がいる可能性もあります。このようなケースでは、理念や指針をわかりやすく、丁寧に説明することが大切です。
理念や指針に共感してもらえれば、社員のモチベーションは高まります。自身でも、示されたビジョンやミッションを実現したい、と考えるようになり、今まで以上に仕事に打ち込んでもらえる可能性があります。
管理しすぎない
社員を管理しすぎてしまうと、かえって自律性を失わせるおそれがあります。上司が部下を管理し、その都度指示を出すような状況では、自律性などを養うのは難しそうです。
口を出す必要があるときは、指示ではなく解決のヒントを与えましょう。こうしたらよいのではないか、とヒントを与えることで、社員は自らどうすればよいのかを考えられます。指示と受け取られないよう、いい回しにも注意が必要です。
業務に関する、一定の権限を与えるのも効果的です。権限を与えれば、自身で考えて決断しなくてはならないため、決断力を養えます。つまり、スピーディーに的確な決断をくだせるスキルが身につきます。
管理のしすぎはよくありませんが、放置しすぎるのも問題です。効率よく自律型人材を育成できるよう、定期的なチェックが必要です。必要に応じて面談を実施し、話をしっかりと聞くなど、サポートも忘れないようにしましょう。
まとめ
変化が激しく、先が読めない時代だからこそ、企業には自律型人材が必要です。本記事でお伝えした大切なポイントを踏まえ、自律型人材の育成に取り組んでみましょう。なお、以下に紹介するサービスも参考になるので、気になる方はぜひ目を通してください。