ブレンデッド・ラーニングとは?集合研修とeラーニングを融合させた新しい学習方法
かつて企業研修の手法は、集合研修とeラーニングの二者択一であると考えられていました。しかし、近年ではより深みと広がりのある学習効果を目指し、両者を組み合わせた研修設計がなされるようになっています。
集合研修とeラーニングのメリット・デメリット
集合研修とeラーニングには、それぞれ相反するメリットとデメリットがあります。以下にその例を挙げてみましょう。
- 集合研修は講師と受講者が場所や時間を共有して学習に専念できる一方で、場所と時間に関しては逆に制約となるケースもあります。eラーニングは場所や時間の制約を受けることなくいつでも好きなときに学習できますが、学習に専念する環境は自分で整えなければなりません。
- 集合研修は講師の当たり外れがあったり、受講者一人ひとりのレベルに沿った学習が難しかったりしますが、eラーニングはクオリティが一貫しており、受講者のレベルに合ったコンテンツで効率よく学習することができます。
- 集合研修では講師に質問をしたり、ほかの人の意見を聞いたり、議論をしたりできますが、eラーニングは基本的に自学自習となり、インタラクションも非同期型が中心となります。
集合研修とeラーニングを融合させるブレンデッド・ラーニング
多様な学習ニーズに応じて集合研修とeラーニングを使い分け、融合させることでそれぞれのメリットを生かし、デメリットを打ち消す研修設計が可能になります。これをブレンデッド・ラーニングといい、講師が受講者個々のニーズに沿って指導できるようになったり、受講者自身が研修を主導・設計することができたりと、これまでの研修にはない特徴が生まれています。
事例に見るブレンデッド・ラーニングの進化
ここでブレンデッド・ラーニングの先進事例である米IBMのラーニングモデルをご紹介します。同社の研修体系は、下記のように教育とコラボレーションの幅に応じた4つのパートから設計されています。
- 業務支援と参照資料
web講義、eブック、動画、webページなどをインターネット経由で提供し、基礎的な知識移転を図る仕組み - インタラクティブ・ラーニング
eラーニング、自主学習用モジュール、インタラクティブゲーム、コーチング・シミュレーションを、人を介さずマルチメディアで提供する仕組み - コラボレーション型学習
ライブの仮想教室、バーチャルグループワーク、電子会議など、受講者と講師がコンピューター上のコミュニケーションを通じて学習する仕組み - 集合研修
集合研修、メンタリング、ロールプレイ、ケーススタディなどの対面学習
IBMではこのラーニングモデルをベースに、各種社内研修の設計を行っています。例えば新任マネージャー向け研修では、集合研修でマネージャーを拘束し過ぎないことや、日常業務に直結したコンテンツをグローバルに配信することなどを考慮して集合研修を5日間に縮小した一方で、インタラクティブ・ラーニングやコラボレーション型学習に6カ月をかけています。このように、ブレンデッド・ラーニングは集合研修とeラーニングだけでなく、コーチングやメンタリング、インフォーマル・ラーニング、業務支援までも融合的に活用したものに進化しているのです。
より実務的でソーシャルな学習へ
ブレンデッド・ラーニングが注目されるようになった背景には、大人の学習機会の割合を示した「70:20:10フレームワーク」という考え方があります。これは、
- 学習の70%は、「実際の仕事経験(Experiential learning)」によって起こる
- 学習の20%は、「他者との社会的なかかわり(Social learning)」によって起こる
- 学習の10%は、「公的な学習機会(Formal learning)」によって起こる
というものです。これからの研修は、集合研修やeラーニングによる学習=10%のみの「公的な学習機会」を中心に考えるのではなく、もっと実務的でソーシャルな学習を志向することが望ましいとされているのです。