コラム

ハラスメント研修は義務?
種類と実施方法、効果を上げるポイント

近年、多種多様なハラスメント問題について大きく注目されやすくなっています。そのため、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントといった対策を義務化されたハラスメントの他に、リモートハラスメントやリストラハラスメントなど新たなハラスメントも増えており、これらの対策のためにハラスメント研修を行う企業も増えています。

そこで本記事では、「ハラスメント研修に関する基礎知識」「ハラスメント研修の種類と実施方法」「ハラスメント研修の効果を上げるポイント」の3点について解説します。

ハラスメント研修の基礎知識

まず、研修を行う前にハラスメントの基礎知識を把握しておきましょう。ここでは、ハラスメント研修の概要についてご紹介します。

ハラスメント研修とは?

「ハラスメント」とは、相手を不快にさせたり苦痛を与えたりする言動を意味する言葉です。具体的には「学校や会社などの他の人が大勢いる前で大きな声で叱る」「威圧的な態度で相手に接する」「相手に執拗な嫌がらせをする」などの行為がハラスメントに挙げられます。

企業におけるパワーハラスメント研修は、従業員がハラスメントや差別を防止し、適切に対処するための研修です。参加者は、ハラスメントの定義や法律に関する知識を学び、ハラスメントが与える影響や被害者の心理を理解します。さらに、適切な対応方法や報告手順、コミュニケーションスキルの向上など、ハラスメントに対処するための具体的なスキルや行動を身につけます。パワーハラスメント研修は、企業内の雰囲気や文化を改善し、従業員の安全と働きやすさを確保するための重要な取り組みと言えるでしょう。

ハラスメント研修は義務化されている?

職場でハラスメントが発生すると、従業員の意欲の低下・心身の不調などさまざまな障害が起こります。また、ハラスメントの被害者だけでなく、企業にとっても生産性の低下や離職率の増加など、業務への支障や社会的信用を失うなどの大きな問題にもなりかねません。

そこで国は、ハラスメントのない社会の実現に向けて「労働施策総合推進法」を改正。大企業では2020年6月から、中小企業では2022年4月から事業主がパワーハラスメント防止措置を講じることが義務化されました。

パワーハラスメントの防止措置として、事業主のパワーハラスメント対策の方針の明確化と従業員の周知、実際にパワーハラスメントが発生したときの迅速かつ適切な対応などが挙げられています。その中でパワーハラスメント研修は防止措置の一つに位置付けられています。

ただし、防止措置が義務化されているハラスメントの種類はパワーハラスメントのみで、その他のハラスメントは防止措置が義務化されていません。将来、他のハラスメントも防止措置の対象になる可能性もあります。

【出典】「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

ハラスメント研修の主な種類と内容

ハラスメント研修には主に5つの種類があります。それぞれの種類について、具体的な研修内容を紹介します。

パワーハラスメント研修

職場におけるパワーハラスメントを未然に防ぐために行われるのがパワーハラスメント研修です。パワーハラスメントとは、パワハラと略されて使われることも多く、厚生労働省の定義する「職場のパワーハラスメント」は、職場で行われる行為の中で

  1. 優越的な関係を背景とした言動
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
  3. 労働者の就業環境が害されるもの
という三つの要素の全てを満たすものを指し、職場のハラスメントは具体的に6つの類型に分類されています。
  • 身体的な攻撃
  • 精神的な攻撃
  • 人間関係からの切り離し
  • 過大な要求
  • 過小な要求
  • 個の侵害
という行為が「代表的な行為」として分類されています。

例えば、一般社員の場合は「上司からハラスメントではないかと思われる扱いを受けている」という悩みがあり、管理職や上司の場合は「部下に指導する際に厳しく言いすぎてしまい、ハラスメントになってしまうのではないか」などの悩みを抱えています。

そこでハラスメント研修では管理職や上司に対して「部下の価値観を尊重し、自分の考えばかりを押し付けない」と言う指導を行い、一般社員に対しては「上司が悪いという発想を変え、自分が上司の立場で物事を考える」と指導します。

ハラスメントは、コミュニケーションにおける行き違いや誤解が原因で起こるケースもあるため、防止するにはコミュニケーションスキルを高める必要があります。より客観的に振り返るためにチェックリストを使用してハラスメントに対しての認知度を再確認し、普段からハラスメントにつながりそうな言動をしていないか振り返ることも重要です。

セクシャルハラスメント研修

セクシュアルハラスメントは、セクハラと略されることが多いハラスメントです。相手からの性的な言動が原因で、職場や日常生活の中で不快感や屈辱感を与える行為のことを指します。セクシュアルハラスメント研修では、セクシュアルハラスメントの原因や判断基準、問題となる言動について学びます。

異性へのセクシュアルハラスメントだけでなく、同性に対して行った性的な言動もセクハラに該当しますので、ハラスメント行為の内容や注意点、防止するための方法などについても研修で学びます。

セクシュアルハラスメントについては、特に性的な内容が関わるため、被害者が相談窓口の担当者に言えないまま職場環境が改善されないといったケースも少なくありません。
ですから、そもそもセクシュアルハラスメントを起こさない環境を作るために重要な研修であるといえるでしょう。

マタニティハラスメント研修

マタニティハラスメントとは、マタハラと略されて使われており、女性労働者が妊娠や出産、育児に関しての制度を利用したことなどを理由に、同僚や上司などから嫌がらせなどを受けて、就業環境を害されることを指します。近年は、国が男性労働者の育児休業の取得促進も推進しており、男性労働者の育児休業に関するハラスメントはパタニティハラスメントと呼ばれています。

男女問わずに労働者が出産、育児に関する制度を利用しやすい職場環境の構築が求められているため、マタニティハラスメント研修では、どのような言動がマタニティハラスメントにあたるのか、男女ともに働きやすい職場環境を作るにはどうすべきかなどを学習します。

アルコールハラスメント研修

アルコールハラスメントとは、アルハラと略されて使われており、飲酒による迷惑行為、アルコールの力によって行われる嫌がらせのことです。特に職場においては懇親会や歓送迎会など、社内のメンバーでの飲酒を伴う会食が行われることは珍しくありません。

過去には一気飲みの強制なども往々にして発生していましたが、近年では無理やりお酒を勧めることもハラスメントに該当します。
アルコールハラスメント研修では、特に過去の会食での立ち振る舞いと現在の立ち振る舞いの違いやハラスメントに該当する言動や行動、アルコールハラスメントを防ぐための措置を学びます。

上司からの飲み会参加の強要はパワーハラスメント、酔った勢いで性的言動を繰り返すことはセクシュアルハラスメントにもつながるため、アルコールハラスメント研修を行うことで他のハラスメントとの関係も正しく理解できます。

モラルハラスメント研修

モラルハラスメントとは、モラハラと略されて使われることが多いハラスメントです。精神的な虐待行為で、主に言葉や態度などで特定の人物を傷つける行為のことを指します。

正確にはモラルハラスメントはパワーハラスメントの一つに該当しますが、特定の人物に精神的な嫌がらせを行うことが特徴です。

モラルハラスメント研修は、モラルハラスメントの定義や加害行為の特徴を理解することで、モラルハラスメントにならないコミュニケーション方法を学ぶ研修です。パワーハラスメントと異なり、加害行為が表に出にくい事から、未然にモラルハラスメントを発生させない方法や、被害があった場合の対処法について重点的に学習します。

ハラスメント研修を実施する方法

ハラスメント研修を行う方法として、「社内研修」「外部研修」「eラーニング」の3つが挙げられます。それぞれの特徴をご紹介していきます。

社内研修

社内研修は外部に委託せず社内の従業員で行う集合研修のことです。組織内の風土や問題について理解しているため、より効果的な研修を実施できます。

また、研修準備で関連の法律を調べたり研修のスケジュール調整、研修講師を担当する経験は社員のスキルアップにもつながるというメリットがありますが、専門的な知識やスキルが不十分だと、間違えた知識を与えてしまったり周囲からの不満が出てきて、その講師が退職してしまうと研修が実施できなくなるというデメリットもあります。

外部研修

外部研修は、企業が外部の専門家や講師に委託して行う研修のことを指します。外部研修の特徴は、専門知識や豊富な経験を持つ講師による専門性の高い指導が受けられることです。

また、社外の人間からの研修を受けるので、参加者は社内の人間関係や日常業務から離れて集中して学ぶことができます。さらに、他の企業や業界の事例を学ぶことで、新しい視点や学びを得ることができます。社内研修に比べて費用が高いのがネックではありますが、そのマイナスを補うことができるほどの研修効果が期待できます。

eラーニング

eラーニングは、インターネットを利用した研修のことです。近年は、コロナ禍もありzoomやteamsなどのオンラインで行う会議や研修が一般的になってきました。また、動画を視聴して学ぶことができる研修もあり、eラーニングは時間や場所を選ばずに学習できるのが特徴です。

また、外部研修のように講師や会場費といったコストも抑えられるため企業側にもメリットがあります。参加がしやすい分、途中離脱や退席がある場合もありますが内容にはさまざまな工夫が必要になるでしょう。

ハラスメント研修の効果を上げるポイント

ハラスメント研修の効果をあげるためには、どんな点に注意して研修を実施すれば良いでしょうか。ここでは、ハラスメントの効果を上げるポイントを4つ紹介します。

アンケートを併用する

事前に職場内でアンケートを実施し、職場内でハラスメントが起こっているかどうかなどの現状を把握しておきましょう。匿名でも、ハラスメントの実情を把握することで、後述するケーススタディなどで活用できます。

また、研修を行った後に受講者に対してアンケートを実施することも有効です。ハラスメント研修の成果は可視化しにくいので、アンケートで研修前の意識と研修後の意識、行動計画などを書いてもらうことで、客観的に研修効果を検証できるようにすることが大切です。

研修は継続的に繰り返し行う

ハラスメント研修は継続的に繰り返し行うことが効果的です。目安としては、半年~1年に1回は行うことが望ましいです。

研修を行った直後は社員の意識も高まり、行動が改善されますが、時間の経過とともにだんだん意識が薄れていきます。そのためハラスメント研修を継続的に行うことで、風土や行動の定着化を図ります。ですから、研修で自分の改善すべき行動や習慣化すべき行動を定めておき、研修ごとに振り返りを行い、ハラスメントを起こさない考え方や指導法が抜けないように定期的に研修を行うことが効果的です。

「パワーハラスメントにならない指導方法」を具体的に説明する

研修の際に、パワーハラスメントにならない指導方法を説明することも重要です。近年はハラスメントの相談件数が増えており、上司も「これを言うとパワハラになってしまうんじゃないか」と、指導することを躊躇するケースが増えてきました。当然、適切な指導ができなければ部下の成長にもつながらなくなります。

そこで、パワーハラスメントにならない指導法を説明し、「このように指導すれば良いんだ」というやり方を身につけてもらいます。ケースごとに必要な指導法は異なるため、様々なケースを紹介し、上司が適切に指導できるように研修することが重要です。

ロールプレイングやケーススタディを導入する

研修の効果を最も高める方法の一つがロールプレイングやケーススタディを導入し、実践的な研修を行うことです。

講義で理論や手法を学んだうえでロールプレイングを行い、ハラスメント問題の発生と解決を実践的に学ぶことが重要です。
研修では「パワーハラスメントをする側」「パワーハラスメントをされる側」に加えて「パワーハラスメントを放置している側」についても話し合い、どう解決していくかを学びます。それぞれの立場に立って経験することは、研修効果を高めるのにとても効果的です。

また、社内のハラスメント事例などを取り上げたケーススタディも、身近なテーマなので当事者意識を持ちやすくなります。ロールプレイングやケーススタディは通常の研修よりも準備が必要ですが、非常に効果的なのでおすすめの研修方法です。

ハラスメント研修を行い、ハラスメントが発生しにくい職場環境へ

今回は、ハラスメント研修の内容やハラスメント研修を受けるにあたってのポイントなどを解説しました。法律の改正により、これまで以上に職場環境を改善する取り組みが重要視され、会社に属する一人一人にも高い意識が求められています。

そこでNTT HumanEXでは、ハラスメントに関する研修サービスを行っています。ハラスメント防止の取り組みとして何をしたらよいかわからない方や、例年のハラスメント研修を一新したい方など、研修サービスが気になる方はお気軽にお問い合わせください。

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