コラム

人材アセスメントの考察 ~ポイントとトレンドの変化

1.アセスメントとは

Assessmentとは「評価」や「査定」という意味があり、評価する対象が何かにより、環境アセスメントとや人材アセスメントと呼ばれています。今回は従業員を評価する人材アセスメントに焦点を当てます。
人材アセスメントのルーツは諸説ありますが、米国のスパイ養成課程の中で最適な人材を見極めるために始まったことが起源だと言われております。

2.人材アセスメントの目的

それでは、人材アセスメントは何の目的で企業が導入しているのでしょうか。
人材アセスメントは、被評価者の現有能力や次の役職やポストに登用された時に、期待する役割を発揮できるかどうかを見極めるために活用されます。従いまして、現在を評価して将来を予測するのです。
具体的には人材マネジメントの中で、人事考課・昇格・異動配置・登用・育成に活用されます。
どのような用途においても人材アセスメントは、被評価者の人生に大きく影響する行為であることは間違いありません。

3.人材アセスメントの大事なポイント

人材アセスメントの大事なポイントは3つです。

① 評価基準の策定
② 正しく評価基準通りに評価できる人材を育成する
③ 人材アセスメントの結果が被評価者の前向きな行動変容につながるか

①評価基準の策定

みなさまは望遠鏡や顕微鏡を利用されたことはあるでしょうか。
人はみたいものを見るために、その用途に合わせてフィルターを変えています。遠くのものをみたいときは望遠鏡を使い、近くのものをより精緻にみたい時には顕微鏡を使います。これは評価基準も同じです。

例えば、企業の中で主体性の発揮を評価したいのであれば、評価項目の中に主体性に関わる評価軸を入れなければなりません。加えて、「主体性」という言葉をその会社ではどのように定義づけしているのかを明らかにし、5段階評価であればどのような状態が5点であり1点であるかを、誰が聞いても納得できるよう明確な言葉で表すことが重要になります。また、じっくりと粘り強くものごとを探求できる力を評価したいのであれば、思考の粘り強さに関する指標を入れなければなりません。

このように、まず初めに企業や役職ごとにどのような人材が必要であり、その人材にはどのような能力が必要であるのか、要件定義を明らかにする必要があります。人材の要件定義が明らかになった後、その要件を満たすために必要な力を要素分解して明確な言葉に変換する必要があります。

昨今、人事制度の見直しに伴い、ジョブ型の人事制度に移行される企業も多くなっております。各ジョブで求められる人材要件を整備されたタイミングで、評価基準も見直しすることが必要です。

②正しく評価基準通りに評価できる人材を育成する

評価に必要な評価基準ができた後は、それを正しく運用できる人を育てる必要があります。
いくら精緻な人材要件が整っていても、運用するのは人です。正しく運用できる人を育てることが重要です。
評価者によって評価の甘さや厳しさ(ここでは甘辛という)があってはいけません。評価者ごとの評価に対する目線合わせをするために、評価者のトレーニングが有効です。具体的には、評価に対するケーススタディを作成して、評価者ごとにどのような評価をするか話し合うことで、自分自身の評価に対する甘辛を補正していきます。

③人材アセスメントの結果が被評価者の前向きな行動変容につながるか

3つ目のポイントは、基準通り評価されたことが人事考課・昇格・異動配置・登用・育成などの人材マネジメントの活用の中で、被評価者の心理的なモチベーションを高められるかどうかが重要になります。
いくら公平・公正な評価を受けたとしても、人材アセスメントの結果を受けて被評価者が後ろ向きに行動変容になってしまっては効果が半減します。もし、批評価者が「あの上司から言われて納得できないよねぇ」という関係性では、いくら適正な評価ができていたとしても、行動変容にはつながりません。「確かに思い当たるところがあるなぁ」ということを被評価者が納得感を持ち自覚して、前向きな行動変容につなげていくことが大切になります。

とりわけ、上司と部下の間で行われる人事考課については、日頃のコミュニケーションが重要になります。評価面談の半年だけではなく、ことあるごとに目標に対する進捗や改善提案をフィードバックすることにより、半年の評価の納得感が格段に向上します。

4.アセスメントで評価される主な項目と評価手法

それでは、人材アセスメントはどのように行われているのか、考えていきましょう。
今回は特に外部の評価機関がどのような観点で評価しているのか、ポイントを押さえていきます。評価基準をどのように評価していくか。大きく評価する対象として、3つ考えられます。

① 思考
② 行動
③ 姿勢・態度

① 思考

いわゆる論理性や問題解決力です。これを評価するには、ケーススタディを解いたり、自組織の課題に対してどのように考えているのか、思考のプロセスを文字に書き起こすことで評価します。
具体的にはインバスケット演習と呼ばれる未処理案件について、どのような考えのもと重要度と緊急度の軸で限られた時間の中で案件を処理するか問うことができます。
また、自由記述式の論文を書くことも有用です。職場に対してどのような問題意識を持ち、それをどのように解決に導こうとしているのか評価することが可能です。

② 行動

グループワークやロールプレイを行うことで、実際の職場を想定した場面を再現し、その中でどのような言動を行うか評価します。
具体的には、グループワークの中でグループに対して影響力が高い発言をしたり、周囲の意見をしっかり傾聴したりすることを確認することで、どのような行動特性があるのか評価します。
ほかにも部下との面談演習を行うことで、上司としてどのように部下と接するタイプなのか評価することが可能です。

③ 姿勢・態度

表出されない項目になりますが、その人がどのような考え方のもと思考や行動をしているかを評価します。
具体的には思考や行動を評価しながら、その背景にある価値観を総合的に判断するという評価手法です。

5.人材アセスメントの限界


人材アセスメントは人事考課であれば過去のデータに基づく評価になりますし、外部の評価機関が行う人材アセスメントは、その評価場面での評価になります。
実際に職場でどのような成果を今後あげるか、現在地を評価して未来予想として人材アセスメントのデータを活用することになります。

加えて、人材アセスメントに関する対策書籍も多数出ているので、どのような観点で対処すれば点数が多く加算されるか対策ができてしまう可能性があります。
従って、人材マネジメントの中に人材アセスメントの評価データをどれだけ活用するかについて企業内でウェイトを考える必要があります。

6.アセスメントのトレンド変化

これまでは新卒社員を一括採用し優秀な成果を挙げた社員が管理職ポストに登用されるケースが多く見受けられました。しかし、これからの人口減少を考慮し、より生産性の高い人材を早く専門的に育成していくために、ジョブ型雇用にシフトする企業が増えています。
これまでのように職種に関係なく管理職としての基準が一般的だったものが、職種と役職の掛け合わせで人材要件を作成し、それに見合う評価基準を作る必要があります。もし、現在の評価基準が現場の業務と違和感があるようなら、人材要件から評価基準まで見直しされてはいかがでしょうか。

7.最後に

今回は人材マネジメントに極めて有効な人材アセスメントを取り上げてきました。
人材アセスメントの大事なポイントは「客観性」「公正性」「納得感」が非常に大事であり、その情報を用いて被評価者が育成に対して前向きな行動変容が起きることが大切です。
企業・事業戦略にもとづく人材戦略として、戦略変更のタイミングで人材アセスメントの基準から見直されてみてはいかがでしょうか。

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