何が違う?リーダーシップとマネジメントの定義と必要な能力
ドラッカー、コヴィー、コッターをはじめ、多くの人がリーダーシップとマネジメントについて定義しています。その捉え方はさまざまで、リーダーシップを上位概念としてマネジメントを考えたり、リーダーシップとマネジメントを同列に捉えたりと、さまざまな定義があるのです。主に語られているそれぞれの役割や違い、必要な能力について見ていきましょう。
著名人が語るリーダーシップとマネジメントの違い
リーダーシップとマネジメント、それぞれの役割は異なりますが、著名人はどのように定義しているのでしょう。
- ピーター・ドラッカー
- マネジメントとは物事を正しく行うことであり、リーダーシップとは正しいことを行うことである。
- スティーブン・コヴィー
- マネジメントは成功のはしごを効率よく昇ることであり、リーダーシップははしごをかけ違っていないかどうか判断することである。
- ジョン・コッター
- リーダーシップは変化に対応するものである。マネジメントは複雑なものに対応するものである。
つまり、リーダーシップとは、置かれている状況を判断し、どの方向に進むのか「ビジョンを示す」こと。マネジメントとは、ビジョンに向かって効率よく進むために「施策を作り、管理する」ことだといえるでしょう。
リーダーシップとマネジメントそれぞれに必要な能力
リーダーシップとマネジメントでそれぞれどのような能力が必要なのか、コッターは『リーダーシップ論』で次の点が大事だと述べています。
リーダーシップはビジョンを示しメンタルへ働きかける
- 方向性の設定
- メンバーの心を統合
- 動機づけと啓発
マネジメントは下地作りと環境整備
- 計画立案と予算設定
- 組織化と人員配置
- コントロールと問題解決
この2つの違いについて、具体的な事例をもとに見ていきましょう。
事例から見るリーダーシップとマネジメント能力の違い
ある老舗旅館では顧客が減少し、経営に行き詰まりを見せました。先代経営者は価格を下げ、客数を増やして経営を再建しようと試みたものの忙しくなるだけで利益は上がらず。その最中、先代経営者は他界しました。
膨大な借金を抱えた旅館を引き継いだのは長男。彼は「経営の抜本的な改革が必要」と判断し、今までの「薄利多売」から「客単価を上げる」ことに経営方針を転換しました。
今までと全く異なる方針に従業員は戸惑いました。しかし彼は「今変えないと旅館自体がなくなる」「大切なのは、旅館都合ではなくお客様都合」と事あるごとに伝え、従業員の士気を高めたのです。
設備投資ができないなかで客単価を上げるため、長男は「料理」と「サービス」の充実をビジョンに掲げました。
料理長は新しい経営方針を元に、評判のよい飲食店を調べたり食べ歩いたりして、「どんなメニューならお客様に満足していただき、しかも、予算内で提供できるか」を考え、試食会を重ねました。接客を任されている女将は、「今、できる範囲でお客様が“また来たい”と思ってくれるサービスは何か」を徹底的に考え、お客様の声を元に接客方法やアメニティなどの改善に努めました。
できることを少しずつ改善した結果、客単価を上げていくことに成功。7年後には客単価を3倍に上げ、高級旅館に立て直すことができたのです。さらに、予約や情報管理などの業務改善にも取り組み、コストダウンにも成功。利益が出るようになり、いい循環が生まれるようになりました。
ここでいうリーダーシップは、方向性を示し、社員の心をひとつにして動機づけた長男の行動。一方、マネジメントは、示された方向性に対して予算を立て、業務内容を改善し、それを仕組みとして動くようにした料理長や女将の行動です。
グローバル時代の今、社会環境は時々刻々と変化しています。組織を動かすためには、多くの課題を解決し、方向性を示すリーダーシップと、示された方向性に対しスピード感を持って実現するためのマネジメント能力が求められるでしょう。