タレントプールとは?
~作り方やメリットデメリットを解説
1.タレントプールとは何か?
タレントプールとは、従業員をタレントと考えて、タレントのリストをデータベースにプールする(貯めておく)手法をタレントプールと呼びます。
タレントプールには大きく2つの対象が存在します。一つは社内の人材をタレントとする考え方と、もう一つはこれから入社する可能性がある社外の人材を対象とする考え方です。
今回は後者のこれから採用する可能性がある社外の人材を対象とする取り組みについて解説いたします。
2.タレントプールの目的
タレントプールの目的は、欲しい人材を素早く採用することです。
あらかじめタレントに関するデータが蓄積されているので、そこに対して採用のアプローチをすることが可能です。膨大な転職市場全体にアプローチをするより、欲しい人材に直接オファーを出して採用することで採用の効率化を図ることが期待できます。
3.タレントプールの由来
タレントプールという考え方はどこから生まれたのでしょうか。タレントプールとはアメリカの大手コンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーが発表した「The War for Talent(ウォー・フォー・タレント)」という報告書から生まれました。「The War for Talent」には、同社が1997年から2000年にかけて実施した「人材獲得・育成」に関する調査結果がまとめられており、2002年には書籍として刊行されています。
タレントプールを作ったうえで、データベースリクルーティングという採用のマーケティング手法を行うためにデータベースとなるプールが必要です。
4.タレントプールが必要になっている背景
タレントプールが採用のマーケティング手法として有効であることを解説してきましたが、今注目されている背景について解説します。
労働人口の減少
厚生労働省が発表している我が国の人口推移のグラフをご覧ください。
引用:厚生労働省 我が国の人口について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21481.html
このグラフからもわかるように、日本全体の労働人口が減ることは明らかです。人口減少に対応するために、いま所属している社員の生産性を向上させることはもちろんですが、さらに生産性を向上させるために、パフォーマンスが高い優秀な人材を獲得することも重要です。一例として、デジタルトランスフォーメーション(DX)に精通した社員が入社することで、いまの社員の生産性が大幅に飛躍することが期待できます。
労働人口という母集団が減少する中で高パフォーマンス人材を獲得するために、タレントプールの活用は一つの手段といえるでしょう。
従業員や求職者の働き方が多様化、雇用形態の多様化
ある民間企業の調査によれば、フリーランスとよばれる企業に属さずに働く人が、2015年時点で900万人だったのに対して、2021年では約1,600万人に達していると言われています。
また、会社に属していても、雇用形態や従業員の働き方が多様化しており、ゼネラリストとして活躍するメンバーシップ型雇用から、仕事や職種に紐づいて専門性を高めていこうとするプロフェッショナルなジョブ型雇用の流れも大きな影響を与えています。
ゼネラリストは幅広い業務経験を有している点で優れていますが、専門的なスキルや経験が積んでいないことがあります。一方プロフェッショナル人材は専門性を活かして働いていこうとするため即戦力を求める転職には向いています。今後もジョブ型雇用やプロフェッショナル人材を求める流れは加速していくことが予想され、プロフェッショナル人材の獲得手段としてタレントプールが挙げられます。
プロフェッショナル人材の不足、高度人材の獲得
プロフェショナル人材はどのような企業も求めています。新卒社員であってもプロフェッショナル人材に年収1,000万円を報酬とする企業も珍しくはありません。稀少な人材には何人分もの報酬を払ってでも獲得しなければならないというビジネス環境が背景にあります。
急な退職による人員不足へ迅速に対応
雇用の流動化が加速しているため、人材の流出リスクも高まっています。特に会社が期待する社員は高度人材が多く他企業も求めており、転職による退職にて人員欠員に至ることあります。
そうした場合に、退職した社員と同等、もしくは同等以上のタレントプールがあれば、迅速にアプローチし欠員補充の対応が可能です。
5.タレントプールに入れておく主な属性
タレントプールが必要な背景や目的について解説してきましたが、具体的にどのような人をデータベースに入れておくことが効果的なのでしょうか。
一般的に自社に対して何らかの興味関心や接点を持ったことがある人をタレントプールに入れておくことが良いとされます。
- タイミングが合わずに採用に至らなかった人
- 既に自社に関心を持っている人
- 以前、内定を辞退した人や自社で勤務していた人
- 自社のセミナー / 転職イベント等に参加した人
- SNS等でコンタクトがあった人 など
なぜ、自社に興味関心や接点を持ったことがある人を対象にするかといえば、自社に対してポジティブな印象を持っているため、入社する確度が高いことが主な理由です。
6. 企業がタレントプールを活用するメリットとは?
タレントプールを構築すると企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。一番のメリットは優秀な人材で自社にポジティブな印象を持っている人に対して、直接採用のアプローチができることがメリットです。
採用活動の効率化やコスト削減
自社に何らかの関心を寄せている人がタレントプールの母集団になるため、採用活動を効率的に行うことができます。
全く自社に興味関心を寄せていない人に興味関心を持ってもらうには多大な労力とコストがかかりますが、その時間と費用を大幅に抑えることができます。
採用の質の向上
一度、採用面接まで進んでいてタイミングが合わなかった場合、どのようなスキルを持っているか、あらかじめスクリーニングされています。また、自社で勤務したことがある人であれば、社内事情にも精通しているので、教育にかかるコストも大幅に抑えることができます。
特定の専門知識人材が必要な場合に迅速対応が可能
タレントプールであらかじめスキルや経験がデータベース化されていれば、欲しい人材のスキルを検索して、そこにマッチする人に直接オファーをすることができます。
7.タレントプールを実施する企業のデメリット
人材の偏り
タレントプールにいる人は、企業がデータとして残しておきたい人材がプールされていきます。もし同じような価値観でデータが蓄積されていった場合、価値観の多様化が進まない懸念があります。どのような人材が欲しいのか、幅広く検討しプールすることが望ましいでしょう。
中途採用社員の早期離職
タレントプールには一般的に勤務経験がある人がデータベースに登録されています。データベースの登録条件がスキルや経験のみに偏ってしまうと、職務に対するマッチング度合いは高いが、会社の企業文化(カルチャー)にフィットしない人材を採用してしまい、早期離職につながる恐れがあります。
これを防ぐために自社の企業文化(カルチャー)にどの程度フィットしているのかをあらかじめ選考の段階で見極めておくことで、企業文化が維持される仕組みを整えていくことが大切です。
継続的な関係構築
タレントプールの維持に大切なことは、企業とタレントプールのなかの人材との関係性を維持していくことです。タレントプールの人材に対して定期的に会社の情報を発信や最近の求人ポジションに関する情報を発信することが効果的です。関係を維持することは、自社に対してポジティブな印象を与え続けることにつながります。
活きたタレントプールにするためにも、データベースを構築した後にどのように継続的な関わりを持つか事前に検討することが必要です。
8.タレントプールを導入する方法、実践の仕方
これまでタレントプールに関するメリットやデメリットについて解説してきましたが、具体的にどのようにタレントプールを構築していくのか導入方法について解説します。
人材要件を定義する
まずは、通常の採用プロセスと同様に人材要件を定義します。どのような職種に対して、どのような経験やスキルが必要なのか、自社の企業文化(カルチャー)にマッチしているか否かどのように評価するかなど、人材要件は具体的であればあるほど、より明確な人物像を作ることにより採用を円滑に進めることができます。
その際に気をつけたいポイントは、欲しい人材についてスキルや経験をどんどん足してしまい、結果としてスーパーマンのような人材を求めてしまうことがあります。人材要件についてはマストとベターの条件を明確に切り分けて考えることが大切です。
優秀人材のデータベースの作る、タレントプール候補者の属性
データベースを作るうえで大切なポイントはデータベースに入れる基準を明確にすることが大切です。どのような人材も将来的に必要になる可能性はありますが、データベースに入れない人と入れない人の基準を明確にすることで、より質の高いタレントプールを構築することが可能です。
そして、データから欲しい人材を検索できる仕組みを持たなければデータベースは機能しません。人材に対して、どのようなマーキングやタグ付けをするかを決めておかなければ、欲しい人材に適切にアプローチができないデータになってしまいます。
最初に全ての属性情報を切り分けることは難しいので、データベースを構築した後で新たなタグを追加できる拡張性を持たしておくことが必要です。
データベースリクルーティングの方法
欲しいポジションが発生した場合にタレントプールに対して、求人の案件を届けていきます。その際に大切な観点は、なぜあなたに求人のメッセージを送っているのか、あなたを必要としている理由をきちんと明記することが重要です。 一斉送信したメールに読み取られてしまうと、自分でなくても良いのではと感じてしまうので、そうならないように個別具体的なアプローチが大切です。
運用のポイント
タレントプールは構築よりも運用が大切です。単なるデータベースにならないように、定期的なデータベースの見直しやタレントプールに入れる属性を見直すことが重要です。そして、タレントプールに対して定期的に情報を発信していくことで、自社を魅力に感じ続けてもらう仕組みを作ることが重要です。
9.まとめ
今回は採用を効果的に行うためのタレントプールについて解説してきました。皆様の企業では、これまで接点を持った求職者のデータをどのように取り扱われていますか。今後、ますます人材確保が難しくなることは避けられませんので、より効果的で効率的な採用施策が必要です。
欲しい人材を採用し、会社の人的資本をより質の高いものにするために、採用戦略の一つとしてタレントプールを見直してみてはいかがでしょうか。